一般社団法人新金属協会

シリコン部会 プレスリリース

シリコン部会(部会長:角谷 宏 信越半導体株式会社 社長室 担当部長)は、3月12日に2020年の実績、2021年の見通しについて公表しました。

 

1.2020年の実績

1-1)2020年の世界半導体市場は米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染拡大によるマクロ経済への影響が観られたものの、次世代通信規格5Gの本格化やテレワークなどデジタル化の加速によるPC・サーバー向け需要増により堅調に推移した。

WSTS統計によれば、2020年の金額ベースの市場規模は前年比7%増の4,404億ドルとなり、2019年の調整局面から回復基調となった。シリコンウエーハ出荷面積と相関があるIC半導体出荷個数についても前年比7%増の3,101億個となった。

1-2)2020年の世界シリコンウエーハ市場は、半導体需要の回復に伴い全体では堅調に推移した。200mm以下はコロナ禍により民生、車載向けが軟化したものの、300mmはロジック、メモリ向け需要増で堅調となった。SEMI統計によると、2020年の半導体用シリコンウエーハ出荷面積は前年比5%増の124億平方インチとなり過去最高を記録した2018年に次ぐ出荷面積となった。販売金額は前年比微増の112億ドルとなり、1平方インチ当りの平均単価は前年比5%減の0.9ドルとなった。

1-3)当部会集計の国内高純度シリコン統計によれば、2020年の国内単結晶生産は、シリコンウエーハ市場と同様に堅調に推移し、前年比微増の9,415トンになった。

国内単結晶の販売についても、前年比2%増の10,463トンであった。海外向けが前年比5%増と伸長し6,513トンになり、国内向けは前年比4%減の3,949トンとなった。その結果、輸出比率は前年の60%から62%に拡大した。

 

2.2021年の見通し

2-1)2021年の半導体市場は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染拡大の影響が懸念されるものの、各国での感染対策や財政・金融政策による景気刺激策が期待され、次世代通信規格5Gの更なる拡大によるデータセンターの増強、自動車需要の回復と環境対応でのEV化推進による車載向け需要増などにより市場の伸長が見込まれている。

2020年秋季WSTS予測によれば、2021年の半導体市場は前年比8%増の4,694億ドルに拡大し、過去最高を更新すると予想している。地域別成長率としては、市場の6割を占めるアジア地域が9%増と全体の成長を牽引すると予想されている。

また、2021年のIC製品別では、ICの7割を占めるメモリ、ロジックが成長を牽引し、メモリが前年比13%増、ロジックが前年比7%増の成長を見込んでいる。

2-2)当部会は、2021年のシリコンウエーハ需要について、WSTSや各種予測も踏まえ、PC・サーバー向けの需要拡大、車載向けの需要回復、先端品需要の拡大などにより、堅調に推移するものと予想する。

2021年の国内単結晶生産は、300mmの更なる需要拡大と200mmの需要回復を予想し、前年比5%増の9,885トンを見込む。

同様に2021年の国内単結晶販売についても、前年比5%増の10,986トンを見込む。内国内は対前年比5%増の4,147トン、輸出は対前年比5%増の6,839トンと予想する。また、輸出比率に関しては昨年並みの62%程度になると予想する。

多結晶需要についても、半導体向けシリコンウエーハ需要の拡大に伴い、生産量は増加するものと予測する。

 

3.今後の課題

シリコン業界を取り巻く事業環境は、半導体メーカーの事業再編、米中貿易摩擦、中国製造2025の動き、コロナ禍でのデジタル化拡大、極限までの半導体微細化進展など、様々な需要構造変化が続いており、更には国内固有の懸念事項として、世界的に割高な国内電力料金の問題もある。

シリコン部会加盟各社は、需要構造変化への対応と共に、最先端半導体の高精度要求を満たす品質高度化、生産性向上と合理化による不断のコスト低減に取り組んでおり、環境負荷軽減に向けたパワー半導体需要にも対応していく所存である。

また、新金属協会の「半導体サプライチェーン材料規格研究会」と連携し、パワー半導体向け材料の標準化活動を経済産業省の支援も受けて推進しており、パワー半導体用ウェーハの低炭素濃度評価分野において、今後シリコンサプライチェーンに有用な2つの新金属協会規格を作成した。

〔今後のシリコン業界の課題〕

①需要構造変化と品質高度化への対応

1)最先端デバイスの高精度要求への対応

2)環境・省エネルギー用パワー半導体への対応

3)生産性向上と不断のコスト低減

②世界的に割高な国内電力料金への対応

③拡大する半導体市場への安定供給

- 以上 -

 

高純度シリコン生産と販売の推移