シリコン部会(部会長:谷田貝 悟 株式会社SUMCO 社長室 経営企画部 次長)は、3月31日に2021年の実績、2022年の見通しについて公表しました。
1.2021年の実績
1-1)2021年の世界半導体市場は、リモートワークや巣ごもり需要に伴うPC・ゲーム機器需要に加え、5Gの更なる普及に伴う通信機器の高性能化やデータセンター需要の拡大、さらにはワクチン接種範囲の拡大に伴う経済活動の復活などにより好調に推移した。
WSTS統計によれば、2021年の金額ベースの市場規模は前年比26%増の5,549億ドルとなり、過去最高を更新した。シリコンウエーハ出荷面積と相関があるIC半導体出荷個数についても前年比24%増の3,837億個となった。
1-2)2021年の世界シリコンウエーハ市場は、旺盛な半導体需要により好調に推移した。300mmはロジック、メモリ向け需要が昨年に引き続き好調であり、200mm以下でも民生・車載向け需要が回復した。SEMI統計によると、2021年の半導体用シリコンウエーハ出荷面積は前年比14%増の142億平方インチとなり過去最高を記録した。販売金額は前年比13%増の126億ドルとなり、1平方インチ当りの平均単価は前年比1%減の0.9ドルとなった。
1-3)当部会集計の国内高純度シリコン統計によれば、2021年の国内単結晶生産は、シリコンウエーハ市場と同様に堅調に推移し、前年比11%増の10,447トンで過去最高を更新した。
国内単結晶の販売についても、前年比14%増の11,915トンと過去最高であった。海外向けが前年比18%増と伸長し7,711トンになり、国内向けは前年比6%増の4,204トンと回復した。その結果、輸出比率は前年の62%から65%に拡大した。
2. 2022年の見通し
2-1)2022年の半導体市場は、米中貿易摩擦の激化やウクライナ政情等不安材料は引き続き存在するものの、エンドマーケットの需要は引き続き強いとの見方から特段の反動減を
想定せず、2022年は更なる成長が予測されたものと思われる。
2021年秋季WSTS予測によれば、2022年の半導体市場は前年比8.8%増の6,015億ドルに拡大し、過去最高を更新すると予想している。地域別成長率としては、市場の6割を占めるアジア地域が8.4%増、2割を占めるアメリカが10.3%増で成長を牽引すると予想されている。
また、2022年のIC製品別では、ICの7割を占めるメモリ、ロジックが成長を牽引し、メモリが前年比8.5%増、ロジックが前年比11.1%増の成長を見込んでいる。
2-2)当部会は、2022年のシリコンウエーハ需要について、WSTSや各種予測も踏まえ、引き続きPC・サーバー向け、特に先端品の需要拡大や、民生・車載向けの好調維持などにより、堅調に推移するものと予想する。
2022年の国内単結晶生産は300mmの更なる需要拡大が見込まれるものの、供給能力の律速により21年下期横ばいと想定し、前年比5%増10,970トンを見込む。
同様に2022年の国内単結晶販売についても、前年比5%増の12,511トンを見込む。内国内は対前年比5%増の4,414トン、輸出も対前年比5%増の8,097トンと予想する。また、輸出比率に関しては昨年より3%増の65%程度になると予想する。
多結晶需要についても、半導体向けシリコンウエーハ需要の拡大に伴い、生産量は増加するものと予測する。
3.今後の課題
シリコン業界を取り巻く事業環境は、半導体メーカーの事業再編、米中貿易摩擦、中国製造2025の動き、コロナ禍でのデジタル化拡大、極限までの半導体微細化進展など、様々な需要構造変化が続いており、更には国内固有の懸念事項として、世界的に割高な国内電力料金の問題もある。
シリコン部会加盟各社は、需要構造変化への対応と共に、最先端半導体の高精度要求を満たす品質高度化、生産性向上と合理化による不断のコスト低減に取り組んでおり、環境負荷軽減に向けたパワー半導体需要にも対応していく所存である。
また、新金属協会の「半導体サプライチェーン材料規格研究会」と連携し、パワー半導体向け材料の標準化活動を経済産業省の支援も受けて推進しており、パワー半導体用ウェーハの低炭素濃度評価分野において、今後シリコンサプライチェーンに有用な2つの新金属協会規格を作成した。
〔今後のシリコン業界の課題〕
①需要構造変化と品質高度化への対応
1)最先端デバイスの高精度要求への対応
2)環境・省エネルギー用パワー半導体への対応
3)生産性向上と不断のコスト低減
②世界的に割高な国内電力料金への対応
③拡大する半導体市場への安定供給
④顕在化する地政学的リスクに対応したサプライチェーンの多岐化・安定化