一般社団法人新金属協会

シリコン部会 プレスリリース

シリコン部会(部会長:谷田貝 悟 株式会社SUMCO 社長室 経営企画部 次長)は、9月29日に2022年の実績、シリコンメーカーの決算(連結ベース)、2023年の状況・見通しについて公表しました。

1.2022年の実績
1-1)2022年の世界半導体市場は、前半こそ2021年同様5Gの普及やデータセンター需要の拡大等もあり好調を維持したものの、後半には失速し調整局面へと転じた。
WSTS統計によれば、2022年の金額ベースの市場規模は前年比3%増の5,741億ドルと前半の好調が後半の不調を補う形となり、過去最高を僅かに更新した。シリコンウエーハ出荷面積と相関があるIC半導体出荷個数についても同様に前年比3%増の3,954億個となった。

1-2)2022年の世界シリコンウエーハ市場は、半導体同様前半は300㎜ロジック・メモリ向けが好調に推移、200mm以下でも民生・車載向け需要が好調であったが、4Qからはいずれも調整局面へと転じた。SEMI統計によると、2022年の半導体用シリコンウエーハ出荷面積は前年比4%増の147億平方インチとなり過去最高を更新した。出荷金額は前年比10%増の138億ドルとなり、1平方インチ当りの平均単価は前年比5%増の0.94ドルとなった。

1-3)当部会集計の国内高純度シリコン統計によれば、2022年の国内単結晶生産は、シリコンウエーハ市場と同様に年間では前年比9%増の11,360トンで前年に続いて過去最高を更新した。
国内単結晶の販売についても、前年比5%増の12,522トンと過去最高であった。海外向けが前年比9%増と伸長し8,388トンまで増加したものの、国内向けは前年比2%減の4,134トンと落ち込んだ。その結果、輸出比率は前年の65%から67%まで上昇した。

2.シリコンメーカーの2022年決算(連結ベース)
2-1)当部会加盟社の2022年決算期ベースの売上高合計は前年比24%増の14,408億円であり、5年連続で1兆円を上回った。

2-2)設備投資は各社の能力増強投資等により、前年比2.2倍、売上高比30%となる4,371億円となった。

2-3)研究開発費は最先端半導体微細化進展に対応する高精度ウエーハ、環境・省エネルギー対応のパワーデバイス向けウエーハ等の開発が加速し、前年比12%増の310億円となった。

2-4)営業利益は前年比45%増の4,751億円となり、営業利益率も33%へと向上した

3. 2023・24年の見通し

2-1)2023年の半導体市場は前半で2022年後半からの市場の在庫調整が一段と進むものの、年内には底を打つと予想されており、2023年後半から2024年にかけて回復するものと想定される。
 2023年春季WST¥S予測によれば、2023年の半導体市場は前年比10%減の5,151億ドルに留まるものの、2024年には前年比12%増の5,760億ドルまで回復するものと予想されている。地域別では、市場の6割を占めるアジア地域が2023年は前年比15%減に対して2024年は前年比11%増、2割を占めるアメリカが2023年は前年比9%減に対して2024年は18%増と見込まれている。
 また、IC製品別では、2022年にはIC市場の3割を占めるメモリが2023年には前年比35%減と大きく落ち込むものの、2024年には前年比43%まで回復すると予測されている。

2-2)当部会ではWSTSや各種予測も踏まえ、シリコンウエーハ市場は半導体同様2023年には調整局面となるものの、2024年には2022年程度の市場規模まで回復するものと予想する。
 2023年の国内単結晶生産は前年比9%減の10,338トンと見込まれるが、2024年には前年比11%増の11,454トンと推測している。
 同様に2023年の国内単結晶販売についても前年比9%減の11,393トンを見込んでおり、内訳として内需は3,761トン、輸出は7,631トンと予想する。これに対して2024年には国内単結晶販売は12,621トンまで回復すると想定し、内需は4,166トン、輸出は8,453トンと予想する。
更に多結晶需要についても、半導体向けシリコンウエーハ需要同様、2023年は調整、2024年に回復するシナリオを想定している。

3.今後の課題
 シリコン業界を取り巻く事業環境は米中貿易摩擦に代表される地政学的リスクの顕在化やAIの更なる進化及び5Gの普及に伴う極限までの半導体微細化進展など、様々な需要構造変化が続いており、更には国内固有の懸念事項として世界的に割高な国内電力料金や燃料費の問題も懸念材料として挙げられる。
 シリコン部会加盟各社はこれらの変化へ対応するために、最先端半導体対応の為の品質の更なる向上や生産性向上及び合理化による不断のコスト低減に取り組んでおり、更には環境負荷軽減に向けたパワー半導体需要にも積極的に対応していく所存である。

〔今後のシリコン業界の課題〕
①需要構造変化と品質高度化への対応
1)最先端デバイスの高精度要求への対応
2)環境・省エネルギー用パワー半導体への対応
3)生産性向上と不断のコスト低減
②世界的に割高な国内電力料金への対応
③拡大する半導体市場への安定供給
④顕在化する地政学的リスクに対応したサプライチェーンの多岐化・安定化

                              - 以上 -

本資料の取り扱いについて

・本説明資料にて言及した内容は当協会の独自見解に基づいており、如何なる投資等についても何ら約束をするものではありません。何卒ご理解の程、宜しくお願いします。