シリコン部会(部会長:相原 健 信越半導体株式会社 社長室 担当部長)は、10月31日に2023年の実績、シリコンメーカーの決算、2024・2025年の状況・見通しについて公表しました。
1.2023年の実績
1-1)2023年の世界半導体市場は、年後半から生成AI関連に回復が見られたものの、世界的インフレやそれに伴う利上げ・地政学リスクの高まりの影響により通年では前年比マイナス成長となった。
WSTS統計によれば、2023年の金額ベースの市場規模は第1四半期から第4四半期にかけて回復傾向を示したものの、通年では前年比8%減の5,269億ドルであった。また、シリコンウエーハ出荷面積と相関があるIC 半導体出荷個数は通年で回復傾向が見られずに前年比15%減の3,372億個となった。
1-2)2023年の世界シリコンウエーハ市場は、2022年第4四半期から始まった在庫調整の影響が継続し低調に推移した。SEMI統計によれば、2023年の半導体用シリコンウエーハ出荷面積はIC半導体出荷個数と同様の傾向を示し、前年比14%減の126億平方インチとなった。出荷金額は前年比11%減の123億ドルとなったが、1 平方インチ当りの平均単価は前年比4%増の0.98ドルとなった。
1-3)当部会集計の国内高純度シリコン統計によれば、2023年の国内単結晶生産は、シリコンウエーハ市場と同様に年間では前年比15%減の9,621トンとなり低調に推移した。
国内単結晶の販売についても、前年比13%減の10,844トンであった。海外向けが前年比13%減の7,300トン、国内向けは前年比14%減の3,545トンにまで落ち込んだ。輸出比率は前年同様の67%であった。
2.シリコンメーカーの2023年決算
2-1)当部会加盟社の2023年決算期ベースの売上高合計は前年比11%減の1兆2,883億円であり、不調ながらも6年連続で1兆円を上回った。
3.2024年・2025年の見通し
3-1)2024年の半導体市場は生成AI関連の需要が旺盛であり、高い成長が見込まれる。
2024年春季WSTS予測によれば、2024年の半導体市場は前年比16%増の6,112億ドルにまで成長し、2025年には前年比12%増の6,874億ドルまで伸長するものと予想されている。地域別では、市場の5割強を占めるアジア地域と3割弱を占めるアメリカの2つの地域において、2024年、2025年共に前年比2桁台増の成長を続けると予想されている。
また、IC製品別では、2023年にIC市場の3割弱を占めたメモリが2024年には前年比77%増と大きく回復し、2025年には前年比25%増まで更に伸長すると予測されている。
3-2)当部会ではWSTSや各種予測を踏まえつつも、COVID-19の影響で積み増された在庫の調整に時間を要している実情を考慮し、シリコンウエーハ市場は半導体よりも回復に時間を要すものと予想する。
2024年の国内単結晶生産は前年比3%減の9,300トンと見込むが、2025年には前年比10%増の10,200トンと推測している。
同様に2024年の国内単結晶販売についても前年比3%減の10,500トンを見込んでおり、内訳として内需は3,400トン、輸出は7,100トンと予想する。これに対して2025年には国内単結晶販売は11,600トンにまで回復すると想定し、内需は3,750トン、輸出は7,850トンと予想する。
更に多結晶需要についても、半導体向けシリコンウエーハ需要同様、2024年は調整、2025年に回復するシナリオを想定している。
4.今後の課題
シリコン業界を取り巻く事業環境は中東情勢緊迫化による石油供給懸念や価格上昇、米中対立、台湾有事等の地政学的リスクによる半導体自国誘致の動き、EVを代表する中国産業の躍進・供給過剰、中国シリコンメーカーの台頭、半導体各社による生成AIでの覇権争い、インテルショック、極限までの半導体微細化進展および3次元積層化技術展開など、様々な需要構造変化が続いており、更には世界的なインフレによる原材料高、国内固有の懸念事項として、世界的に割高な国内電力料金の問題もある。
シリコン部会加盟各社はこれらの変化へ対応するために、最先端半導体対応の為の品質の更なる向上や生産性向上及び合理化による不断のコスト低減に取り組んでおり、更には環境負荷軽減に向けたパワー半導体需要にも対応していく所存である。
〔今後のシリコン業界の課題〕
①需要構造変化と品質高度化への対応
1)最先端デバイスの高精度要求への対応
2)環境・省エネルギー用パワー半導体への対応
3)生産性向上と不断のコスト低減
②世界的に割高な国内電力料金への対応
③拡大する半導体市場への安定供給
④シリコン産業における人材確保
⑤顕在化する地政学的リスクに対応したサプライチェーンの多岐化・安定化
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