一般社団法人新金属協会

シリコン部会 プレスリリース(2025年3月)

シリコン部会(部会長:相原 健 信越半導体株式会社 社長室 担当部長)は、3月26日に、シリコンウエーハの生産・販売等に関し、2024年の実績、2025年の見通し等について、公表しました。

1.2024年の実績

1-1)2024年の半導体市場は、前年後半から始まった生成AI関連の旺盛な成長が更に進んだ一方、世界的なインフレによるマクロ景気の減速により車載、産業向け等のボリューム半導体の調整が継続した。結果として、製品別・用途別に斑模様な市況を呈した。WSTS統計によれば、2024年の金額ベースの市場規模は前年比19%増の6,276億ドルとなり過去最高を更新した。一方、シリコンウエーハの出荷面積と相関があるIC半導体出荷個数については前年比3.8%増の3,502億個に留まった。

1-2)2024年の世界シリコンウエーハ市場は、2020年以降継続した伸長が2022年をピークに一転減少し、24年1月に底を示したものの、COVID-19の影響で積み増された在庫の調整や世界的インフレなどの影響により緩やかな回復を示す形で推移した。SEMI統計によると、2024年の半導体用シリコンウエーハの出荷面積は前年比3%減の123億平方インチとなり過去最高の2022年に対して16%減と、過去最高水準までの回復には程遠い状況であった。また、販売金額については前年比6%減の115億ドルとなった。

1-3)当部会集計の国内高純度シリコン統計によれば、2024年の国内単結晶生産は、世界シリコンウエーハ市場と同様に低調に推移し、前年比2%減の9,434トンであった。国内単結晶販売についても、前年比4%減の10,396トンとなった。海外向けが前年比3%減の7,113トンに対して、国内向けは前年比7%減の3,283トンとなり、国内販売がより低迷した。その結果、輸出比率は前年の67%から68%に若干拡大した。

2. 2025年の見通し

2-1)2025年の半導体市場は、生成AI関連の継続的な旺盛な需要を中心に、汎用パソコンOSサポート期限切れに伴う買い替え需要への期待などもあり、継続的な成長が見込まれる。

 2024年秋季WSTS予測によれば、2025年の半導体市場は前年比11%増の6,972億ドルと2年連続して2桁台の大きな成長が見込まれる。地域別では、市場の5割強を占めるアジア地域と3割弱を占めるアメリカの2つの地域において、2024年、2025年共に前年比2桁台増の成長を続けると予想されている。

 また、IC製品別においても、ロジックとメモリが前年比2桁台増の成長となり、それぞれ前年比14.6%増、14.7%増と予測されている。

2-2)当部会は、2025年のシリコンウエーハ需要について、WSTSや各種予測も踏まえ、昨年秋に示した成長予測を継続して想定する。

 2025年の国内単結晶生産は前年比10%増の10,400トンを予想する。

 同様に2025年の国内単結晶販売についても、11,500トンを見込む。その内海外向けが7,900トン、国内向けは3,600トンと予想する。また、輸出比率に関しては昨年と同等の69%程度と予想する。

 多結晶需要についても、半導体シリコンウエーハ需要と同様に、前年比10%増となる生産量を予測する。

3.今後の課題

シリコン業界を取り巻く事業環境はアメリカ・トランプ政権への交代に伴う不確実性の増大、中東情勢緊迫化による石油供給懸念や価格上昇、米中対立、台湾有事等の地政学的リスク、EVを代表とする中国産業の躍進・供給過剰、半導体各社による生成AIでの覇権争い、極限までの半導体微細化進展および3次元積層化技術展開など、様々な需要構造変化が続いており、更には世界的なインフレによる原材料高、国内固有の懸念事項として、世界的に割高な電力料金の問題もある。

シリコン部会加盟各社はこれらの変化へ対応するために、最先端半導体対応の為の品質の更なる向上や生産性向上及び合理化による不断のコスト低減に取り組んでおり、更には環境負荷軽減に向けたパワー半導体需要にも積極的に対応していく所存である。

〔今後のシリコン業界の課題〕

①需要構造変化と品質高度化への対応

 1)最先端デバイスの高精度要求への対応

 2)環境・省エネルギー用パワー半導体への対応

 3)生産性向上と不断のコスト低減

②世界的に割高な国内電力料金への対応

③拡大する半導体市場への安定供給

④顕在化する地政学的リスクに対応したサプライチェーンの多岐化・安定化

⑤シリコン産業における人材確保

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本資料の取り扱いについて

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