一般社団法人新金属協会

核燃料加工部会

業界業況

[概況‐核燃料加工業界を取り巻く事業環境] 原子力発電所に対して、2013年7月8日に新規制基準が施行された。同基準への適合確認に関し、これまでに11電力事業者16原子力発電所27基の申請が行われ、17基の設置変更が許可され、そのうち12基が再稼働を果たしている。 核燃料加工業界においては、長期にわ...

業界業況

[概況‐核燃料加工業界を取り巻く事業環境]

原子力発電所に対して、2013年7月8日に新規制基準が施行された。同基準への適合確認に関し、これまでに11電力事業者16原子力発電所27基の申請が行われ、17基の設置変更が許可され、そのうち12基が再稼働を果たしている。

核燃料加工業界においては、長期にわたる生産量激減により、現在も非常に厳しい経営状況が続いている。再稼働発電所が増えることにより核燃料需要が増加することに期待し、あらゆる施策を講じて事業継続に努めているところである。

[核燃料加工施設に対する新規制基準への適合確認の状況]

加工事業者3社は、核燃料加工施設に対する新規制基準に適合するための事業変更許可(2018年3月までに取得済み)に引き続き、設工認(設計及び工事の計画の認可)とそれに続く検査(使用前検査又は使用前事業者検査)の対応を進めてきており、三菱原子燃料(株)及び原子燃料工業(株)熊取事業所は、認可を取得、必要な検査を完了し、燃料の生産を再開した状況である。(株)グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン及び原子燃料工業(株)東海事業所も燃料の生産活動を速やかに再開すべく、設工認の審査の対応を行うとともに、認可を得た施設については、地震、竜巻等の自然現象、外部火災等の人為事象に対する対策強化を進めており、検査を実施中である。

[原子炉等規制法改正への対応状況]

2020年4月から新検査制度の本格運用が始まり、フリーアクセス方式によるパフォーマンスベースの検査が展開されている。新検査制度は、検査指摘事項の重要度評価手法の検討等、継続的な改善が図られており、加工事業者3社は情報共有しながら対応している。

現在、新規制基準への適合のための工事の進捗とともに、新検査制度による使用前事業者検査の実績を重ねている。さらに、新規制基準の適合のための工事の完了後は、正式に定期事業者検査の運用が始まり、その後、「安全性の向上のための評価」(以下「安全性向上評価」という。)及びその結果の報告が必要となる。本年2月、三菱原子燃料(株)は、第1回安全性向上評価書の届出を行った。核燃料加工部会として、引き続き新検査制度の有効性の向上を目指し、安全性向上評価に係る対応方法等についての検討を行っている。

[ウラン廃棄物処理・処分の検討状況]

核燃料加工部会では、ウラン廃棄物の処理・処分の最適化に向けた取組を継続している。

2019年度から資源エネルギー庁委託事業として、ウラン廃棄物の処分に向けた処理技術の開発を新金協が受託し、新金協に出向派遣されているウラン廃棄物処理処分対応専従者が、廃棄物中のウラン濃度低減を目的としたウラン分離技術開発を実施している。2021年度まではウラン廃棄物の性状把握を実施し、2022年度よりウラン分離技術の開発に重点を置き開発を進めているところである。6ヶ年計画の最終年である今年度は、分離技術の開発と工業化に向けた検討のとりまとめを実施している。

クリアランスについては、その測定技術開発の適用範囲を確認するとともに、測定対象を廃棄体等へ応用できるようにするために実施した電力会社との共通研究開発の成果を、日本原子力学会の標準に盛り込むため、ウラン・TRUクリアランスレベル検認分科会で学会標準の改定作業を実施している。

加工事業者のウラン廃棄物処理・処分の技術的課題の解決に向けた取組の継続が重要であり、今後も核燃料加工部会が中心となり活動を進めていく。

活動概要

・年4回開催する定例部会では、ウラン廃棄物対策会議、ウラン廃棄物運営委員会及び加工運営委員会等に係る、国及び関係団体の動向等について、情報交換とその対応に対する意見交換を行い、核燃料加工業界共通の安全規制等に関する課題の解決を図りました。 ・部会傘下の各分科会及びワーキング・グループ(許認可、輸...

活動概要

・年4回開催する定例部会では、ウラン廃棄物対策会議、ウラン廃棄物運営委員会及び加工運営委員会等に係る、国及び関係団体の動向等について、情報交換とその対応に対する意見交換を行い、核燃料加工業界共通の安全規制等に関する課題の解決を図りました。
・部会傘下の各分科会及びワーキング・グループ(許認可、輸送、計量管理、原子力防災、リスク評価、NRワーキング、埋設処分対応、クリアランス対応)では、各種規制に関する情報交換、対応策を検討し、関係省庁との折衝を行いました。また、ウラン加工施設保安情報連絡会では、核燃料加工事業者間の保安に係る技術情報の共有を図りました。その他、INSAF連絡会等、各種打ち合わせを行いました。
・一般社団法人原子力安全推進協会から要請を受け、その運営に協力するため、核燃料加工等関係会社から出向者の推薦を受けて、同協会との間で締結した出向協定書に基づき継続派遣しました。
・ウラン廃棄物対策推進のために協会分室においては、引き続き核燃料加工関係4社の中から選任された常駐者の派遣を受け、日本原燃(株)、(独)日本原子力研究開発機構、電力等と協力し、ウラン廃棄物の合理的な処理処分を実施するための諸課題の解決策の検討及び関係官庁に対し廃棄物問題対応の現状説明を行いました。
・原子力産業の安全性向上と信頼回復を目指して活動している世界核燃料加工安全ネットワーク(INSAF)の運営に協力しました。
・原子力に対する透明性の向上のため、部会を構成する核燃料加工施設で発生したトラブル等の情報公開サイトを運営し、情報を発信しました。
・協会ホームページで部会活動、業界動向等の情報を広く発信するための議論を行い、発信内容を検討しました。

年表

1955年代
1955:原子力基本法・原子力委員会設置法公布
1955:工業技術院地質調査所、人形峠でウラン鉱床発見
1956:科学技術庁、原子力委員会発足
1956:日本原子力研究所・原子燃料公社発足
1956:日本原子力産業会議発足
1956:国際原子力機構(IAEA)憲章に調印、IAEA発足(1957)
1957:原子炉等規制法公布
1957:日本第1号原子炉、原研JRR-1臨界わが国で初めて原子の火がともる
1959:日本原子力学会創立
1960年代
1961:原子力損害の賠償に関する法律公布
1963.10.26:原研動力試験炉JPDRの発電試験に成功(日本で初の原子力発電)
1964:電気事業法公布
1964:「原子力の日」制定、開始
1964:原子力安全研究協会設立
1965年代
1966:日本原子力発電・東海発電所営業運転開始(ガス冷却炉・国内初の商業用原子力発電所)
1967:動力炉・核燃料開発事業団発足
1968:第1回原産年次大会開催
1969:原子力船「むつ」進水
1970年代
1970:日本原子力発電・敦賀発電所運転開始(国内初の沸騰水(BWR)型)
1970:関西電力・美浜発電所1号機営業運転開始(国内初の加圧水(PWR)型)
1971:東京電力・福島第一原子力発電所1号機(BWR)営業運転開始
1973:仏高速増殖原型炉「フェニックス」臨界
1973:通商産業省資源エネルギー庁設置
1974:電源三法公布
1975年代
1976:核不拡散条約(NPT)批准
1976:科技庁に原子力安全局設置
1977:高速増殖実験炉「常陽」臨界
1977:米国エネルギー省(DOE)発足
1978:原子力安全委員会発足
1979.3.28:米国スリーマイルアイランド(TMI)原子力発電所で事故
1980年代
1980:廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)、わが国について発効
1981:原子力安全委員会、初の原子力安全白書をまとめる
1984:UF6積載仏貨物船「モン・ルイ号」ベルギー沖で衝突沈没
1985年代
1985:仏高速増殖実証炉「スーパーフェニックス」初臨界達成
1986.4.26:ソ連チェルノブイリ原子力発電所4号機で事故
1987:原子力発電安全月間創設
1989:世界原子力発電業者協会(WANO)設立
1990年代
1992:日本原燃サービス、日本燃産業と合併、日本原燃が発足
1992:国際原子力評価尺度(INES)の導入
1992:日本原燃、六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター操業開始
1994:英国再処理工場「THORP」運転開始
1994:高速増殖原型炉「もんじゅ」臨界を達成
1995年代
1995:朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)設立
1995:高速増殖原型炉「もんじゅ」ナトリウム漏れ事故
1998:日本原電、東海発電所営業運転停止
1998:核燃料サイクル開発機構発足
1999.9.30:ウラン燃料加工施設(JCO)で臨界事故
1999:ニュークリアセイフティーネットワーク(NSネット)設立
2000年代
2000:原子力バックエンド対策専門部会ウラン廃棄物分科会が設置、4〜12月まで11回開催
2001:中央省庁再編経済産業省に原子力安全・保安院が発足
2001:米国同時多発テロ事件
2002:京都議定書を締結
2002:米ネバダ州ユッカマウンテンを高レベル放射性廃棄物の最終処分場とすることが決定
2003:北朝鮮、核兵器不拡散条約(NPT)脱退を宣言
2003:独立行政法人原子力安全基盤機構発足
2005年代
2005:有限責任中間法人日本原子力技術協会発足(電力中央研究所、原子力情報センターおよびNSネットの機能を統合・再編)
2005:核燃料サイクル開発機構、日本原子力研究所との統合で、独立行政法人日本原子力研究開発機構が発足
1955年代
1954:ウラン鉱の選鉱試験(三菱金属鉱業)
1955〜57:二酸化ウラン粉末の製造研究開始(各社)
1956:金属ウラン精錬の製造研究開始(古河)
1957〜58:二酸化ウランペレットの製造研究(住電工、古河)
1958:アルミニウム‐ウラン系セラミック燃料の製造研究(東芝)
1959:原子燃料の研究開発(三菱原子力工業)
1959:二酸化ウラン燃料の各種製造法研究(古河)
1959:六ふっ化ウランの小規模生産に関する研究開始(住鉱山)
1960年代
1960:原子燃料再転換・成型・組立・加工開発(三菱金属鉱業、三菱原子力工業)
1960:燃料棒の製造研究(住電工)
1960:高密度二酸化ウラン燃料素子の原子炉による照射試験(東芝)
1961:軽水炉用燃料被覆管の動的腐食に関する試験研究(東芝)
1962:振動重填法による燃料棒の製造研究(東芝、日立、住電工)
1962:溶媒抽出法による六ふっ化ウランから二酸化ウランへの転換技術開発(住鉱山)
1964:沸騰水型原子炉(BWR)用燃料集合体組立技術開発(東芝)
1964:二酸化ウラン燃料照射試験(東芝)
1964:照射試験による軽水炉燃料開発(日立)
1964:高温ガス炉用被覆粒子燃料の製造研究(古河)
1965年代
1965:原子力船「むつ」燃料製作(三菱原子力工業)
1965:ダイナパックによる高密度二酸化ウラン粒子の製造試験研究(東芝)
1966:商業用原子力発電開始(発電設備容量:16.6万kW)
1970年代
1970:国産初のPWR燃料(14×14)を関電・美浜発電所へ納入(三菱原子力工業)
1971:国産初のBWR燃料(7×7)を原電・敦賀発電所へ納入(JNF)
1974:科学技術庁と加工事業者による核燃料加工事業者連絡会発足
1975年代
1976:国産BWR8×8被覆管使用開始
1976:ATR燃料の初納入
1978:新金属協会内に核燃料加工部会発足(核燃料加工事業者連絡会発展解消)
1978:動燃人形峠ウラン濃縮パイロットプラント第1期運転開始(1,000台稼動)
1978:累積原子力発電設備容量:1,066.2万kW(17基)
1980年代
1980:原子力安全委員会「ウラン加工施設安全審査指針」を決定
1985年代
1985:累積原子力発電設備容量:2,056.1万kW(28基)
1986:日立、東芝および三菱重工による軽水路部会が発足
1988:日本原燃産業ウラン濃縮工場着工
1990年代
1990:累積原子力発電設備容量:3,038.0万kW(38基)
1992:加工4社による「ウラン廃棄物処理処分推進会議」設置
1992:日本原燃、ウラン濃縮工場操業開始
1993:日本原燃、第1回製品ウラン出荷
1994:濃縮UF6のASTM仕様改訂のC-26委員会に参画
1994:累積原子力発電設備容量:4,036.6万kW(48基)
1995年代
1995:加工4社で欧米におけるウラン廃棄物処理処分に関する調査を実施(団長:MNF中野常務取締役)
1997:原研高温工学試験研修炉(HTTR)用燃料の初納入
1999:ウラン廃棄物初処理処分推進チームの専用事務所として新金属協会分室を開設
2000年代
2004:累積原子力発電設備容量:4,712.2万kW(53基)
2005年代
2005:累積原子力発電設備容量:4,822.2万kW(54基)
1955年代
1958:三菱原子力工業設立
1959:住友原子力工業設立
(二酸化ウラン粉末とペレット)
1960年代
1961:三菱、東海村に原子燃料用地取得
1961:古河、東海村に原子燃料用地取得
1964:住電工・熊取研究所、核燃料製造研究施設開設
1965年代
1966:日本ニユクリア・フユエル、設立事務所開設
1967:米GE、東芝、日立製作所により、日本ニユクリア・フユエル(JNF)設立、核燃料加工事業許可(1968)
1969:住電工 核燃料加工事業許可
1965年代
軽水炉用燃料の変遷
1970年代
1970:PWR15×15型、17×17型燃料開発
1970:BWR型国産初7×7燃料製造開始
1973:BWR型国産初7×7燃料実用化
1970:JNF久里浜工場竣工、操業開始
1971:米WH、三菱重工、三菱マテリアルにより、三菱原子燃料(MNF)設立、核燃料加工事業許可(1972)
1972:古河電気工業、住友電気工業により、原子燃料工業(NFI)設立
1973:住友金属鉱山東海工場完成
1980年代
1980:PWR燃料濃縮度上昇(3.4w/o→3.6w/o、Gd(6w/o)入り燃料開発)
1980:NFI東海製造所完成、操業開始
1983:MNF、燃料加工試験棟完成
1985年代
軽水炉用燃料の変遷〜信頼性向上
1985:BWR新型8×8燃料実用化(ウォータロッド2本、取出平均燃焼度:約29.5GWd/t)
1987:BWR新型8×8燃料(ステップⅠ)実用化(ジルコニウムライナ被覆管、取出平均燃焼度:約33GWd/t)
1988:MNF、加工棟(ガドリニア入燃料製造工場)完成
[出典]平成15年度高燃焼度9×9型燃料信頼性実証成果報告書(原子力安全基盤機構発行)
1990年代
経済性向上・燃料の高燃焼度化
1990:PWR最高集合体平均燃焼度48GWd/t燃料(ステップ1)実用化(低SnZr-4管採用)
1991:BWR新型8×8燃料(ステップⅡ)実用化(太径ウォータロッド1本、取出平均燃焼度:約39.5GWd/t)
1997:JFN、創立30周年。ISO9002、14001認証取得(1998〜99)
1996:MNF、ISO9002認証取得
1998:MNF、本社を東海村へ移転
1998:NFI(東海)、ISO9001認証取得
1998:日本核燃料コンバージョン(JCO)、ジェー・シー・オーに社名変更
1999:NFI(熊取)ISO9001、ISO14001認証取得
1995年代
燃料の高燃焼度化
PWR最高集合体平均燃焼度55GWd/t燃料(ステップ2)開発(ジルコニウム基合金被覆管、大粒形ペレット
1999:BWR新型9×9燃料(ステップⅢ)実用化(取出平均燃焼度:約45GWd/t)(A型:燃料棒74本、太径ウォータロッド2本)(B型:燃料棒72本、角形ウォータチャンネル)
1997:JFN、創立30周年。ISO9002、14001認証取得(1998〜99)
1996:MNF、ISO9002認証取得
1998:MNF、本社を東海村へ移転
1998:NFI(東海)、ISO9001認証取得
1998:日本核燃料コンバージョン(JCO)、ジェー・シー・オーに社名変更
1999:NFI(熊取)ISO9001、ISO14001認証取得
2000年代
軽水炉用燃料の変遷〜燃料の高燃焼度化
2004:PWR最高集合体平均燃焼度55GWd/t燃料(ステップ2)実用化(大粒形ペレット、ジルコニウム基合金被覆管、高濃度Gd入りペレット)
2000:米GE、東芝、日立の3社による国際燃料加工合弁会社「グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)」発足
2000:JNF、ISO9001認証取得
2001:JNF、グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン(GNF-J)に社名変更
2001:MNF、創立30周年
2001:NFI(東海)、ISO14001認証取得
2002:MNF、ISO14001認証取得
2002:NFI、創立30周年
2003:GNF-J、本社を横須賀市へ移転
2004:NFI(東海)、OHSAS18001認証取得
2005年代
2005:BWR高性能9×9燃料の開発(取出平均燃焼度:約50GWd/t)

会員企業