一般社団法人新金属協会

希土類部会

業界業況

1.磁石 2024年1月から12月までの磁性材原料の値動きは6月までの市況は右肩下がり一辺倒であったが、下期より価格が多少持ち直しつつある。 酸化ネオジム(Nd)は年初USD 58.8/kgから始まり6月には一時USD 51.1/kgまで下落したが、12月にはUSD56.67/kgまで回復(対年初▲...

業界業況

1.磁石

2024年1月から12月までの磁性材原料の値動きは6月までの市況は右肩下がり一辺倒であったが、下期より価格が多少持ち直しつつある。

酸化ネオジム(Nd)は年初USD 58.8/kgから始まり6月には一時USD 51.1/kgまで下落したが、12月にはUSD56.67/kgまで回復(対年初▲3.6%)。同様に酸化テルビウム(Tb)は年初USD929/kgから6月まで下げ、下期に多少値を戻しUSD 792/kgまで回復(対年初▲14.7%)。酸化ジスプロシウム(Dy)は市場在庫の影響で年初USD 300/kgから下落し、12月にはUSD 222/ kgまで下げた(対年初▲26.1%)。

2024年の中国における磁性材NdFeBの需要は年率10%程度増加したものの、供給量が需要量を上回ったことが、原料価格の下落要因と考えられる。

中国の米国からのレアアース鉱石輸入量は、前年36,436トン(REO)から30,276トン(REO)へ減少。米国レアアース生産会社MPが2023年第3四半期の生産開始と増産により米国国内でのレアアース鉱石消費が増加したことによるもの。また、ミャンマーから中国へのレアアース鉱石の出荷は、2024年10月下旬からの一時的な輸入禁止及び中国国内の分離増により、前年47,461トン(REO)から34,697トン(REO)へ減少となった。

中国の2024年NdFeB生産量は約284,000トンで、年世界需要量は243,865トン。主な用途別の前年対比は、自動車駆動モーターが+25.4%、自動車その他用途が+14.2%、風力発電が+47.2%、設備モーターが+15.4%、エアコン駆動モーターが+11.3%となっている。

 

2.蛍光体

2024年1~12月の蛍光ランプ国内出荷個数は前年同期比で約19%減であった。LEDランプへの代替が進み蛍光ランプ市場は縮小傾向が続いている。水銀に関する国際条約により一般照明用蛍光ランプは2027年末までに製造終了することが決まっている。

2024年1~12月の薄型テレビ国内出荷台数は、前年同期比で約3%増と4年ぶりにプラスであった。五輪需要や夏季賞与の増額などで特に夏場が好調であった。

照明やディスプレイ用LEDにはレアアース系蛍光体も用いられるが、使用量は極めて少ない。

また有機ELなどレアアースを用いない新たな発光材料も浸透してきた。

この分野のレアアース需要は減少した。

 

3.セラミックコンデンサ

2024年1~12月のセラミックコンデンサの国内生産は前年同期比約7%増の10,720億個となった。

エレクトロニクス市場は買い替え需要や新規モデルの立ち上がり等によりICT関連需要は堅調に推移した。また、スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン等の需要は堅調に推移した。

さらには、AIサーバー等ITインフラ投資の拡大を背景にコンピュータ向け部品需要が増加。

カーエレクトロニクス向けはBEVの販売減速により自動車向け受動部品、センサ関連は低迷となった。自動車における使用部品数も増加しており生産台数減少ではあるものの需要は大きく減少せずにある程度堅調に推移した。

欧州ではドイツを中心とした製造業の低迷、中国の不動産不況、雇用環境の悪化等で需要は低いながら、金融政策による内需拡大が下支えとなっている。半導体向けやエレクトロニクス市場も低調ながらも高い需要が継続されていると思われる。

しかしながら、セラミックコンデンサでは脱レアアース化が浸透しており、小型化、生産者の現地生産等も重なりレアアースの使用量は低位安定した状況で大きな変化はない。

 

4.排ガス触媒

2024年の世界の自動車市場は、コロナ禍からの回復基調の流れの中で生産台数、販売台数とも2023年比で微増となった。一方、国内の自動車生産台数については、一部メーカーの認証問題による生産停止などの要因により2023年比で8.5%の減少となった。

そのような状況下、2024年1-12月の自動車排気ガス浄化用触媒の生産量は9,020トンと2023年1-12月の9,847トンから8%減、販売量については2023年比で13%減、販売金額については2023年比で41%減となった。販売金額の大幅な減少については、触媒成分である貴金属価格の下落、より安価な貴金属使用への移行により販売単価が低下した影響による。

 

5.研磨材

液晶用ガラス基板、ハードディスク用ガラス基板などに使用されるセリウム系研摩材の2024年1~12月の需要は、パリオリンピック・パラリンピックやEUROサッカーなどのスポーツイベントによるテレビ用パネルの需要回復を見込む向きもあったが、総じて低調に推移したと見られる。一方、ハードディスク用ガラス基板向けは、データセンターなどの計画が後ろ倒しになるなど低調な状況が続いていたが、下半期はAIサーバーなどへの投資が動き出し、需要も回復基調となったと見られる。

 

 

 

活動概要

・中国から提案された希土類原料・製品各種のISO標準作成について、経済産業省国際標準課、金属課等関係課と意見交換するとともに、国内対応のために新設した研究会・委員会に部会全社が参加するなど対応を行いました。 ・新金属産業災害防止対策安全委員会における「新金属産業災害防止に関する行動計画」の策定に...

活動概要

・中国から提案された希土類原料・製品各種のISO標準作成について、経済産業省国際標準課、金属課等関係課と意見交換するとともに、国内対応のために新設した研究会・委員会に部会全社が参加するなど対応を行いました。
・新金属産業災害防止対策安全委員会における「新金属産業災害防止に関する行動計画」の策定に協力しました。
・日本の希土類需要推移を集計し、公表するとともに、製品ごとの需要状況等について経済産業省金属課及び資源エネルギー庁鉱物資源課と情報・意見交換会を開催しました。
・中国が特恵関税対象国から卒業するに当たり、一部の加工用原材料品が課税対象品となることから、輸入関税非課税品の対象となるように折衝を開始しました。
・協会ホームページで部会活動、業界動向等の情報を広く発信するための議論を行い、発信内容を検討しました。

年表

18世紀
1794:レアアースの発見
19世紀
19C末:ガスマントル(トリウム、セリウム)が工業化
1940年代
1947:レアアース15元素すべて明らかになる
ブラジル、インド、アメリカでモナザイト鉱石の処理本格化
1950年代
1951:米Molycorp,Montain Pass操業開始
1952:IndianRareEarths、操業開始
1954:モナザイトの世界生産量1万トン
1956:米W.R Grace社、希土類生産開始
1957:中国で白雲鉱処理開始
1960年代
モナザイト鉱石の生産はブラジル、インド、アメリカ、南アフリカ、オーストラリア
アメリカでプラセオ黄の顔料が開発される
FCC触媒量産
1970年代
アラスカの天然ガス輸送パイプラインにミッシュメタル添加がブームに
超磁歪材料(TbDyFe)が開発される
1977:中国から日本へ希土類原料輸入開始
1980年代
1980:中国希土工業代表団来日。協会、阪大、関係者各社訪問
1981:中国でイオン吸着鉱開発
1985:希土類鉱石の世界生産量4万トン
1987:中国、希土類原料で世界一の生産国となる
1988:第1回日中レアアース交流会開催
1990年代
オーストラリアでモナザイトの公害問題が表面化
1992:ブラジル、希土類鉱石の処理中止
1993:中国、鄧小平氏が南順講話にて「中東有石油、中国有希土」と発言
1994:マレーシア、希土類の分離中止
1997:中国、希土類製品の輸出許可制度がスタート
2000年代
2000:希土類鉱石の生産量8.1万トン中国が85%を占める
2002:中国で希土類の鉱山開発、製錬分離事業への外国企業の投資が禁じられる
2004:中国、希土類鉱石生産量9万8,000トン
2008年代
2005:中国、希土類製品の輸出に関し、増値税還付を廃止
希土類原料の価格上昇
希土類原料の中国依存度の問題
1926年代
ライター石の生産開始
1940年代
アークカーボン用フッ化セシウム量産開始
1950年代
板ガラスの研磨に酸化希土(セリウム)が本格採用される
鉄鋼用ミッシュメタル量産開始
1960年代
1962:新金属早わかりシリーズ『レアアース』刊行(新金属協会)
日立、カラーテレビ「キドカラー」発売
Y、Euに蛍光体需要出る
酸化ランタンを添加した高屈折レンズが開発される
1970年代
セラミックコンデンサーに酸化ランタンが使用される
ソニー、ウォークマン発売
SmCo磁石の需要拡大
自動車三元触媒の登場。酸素センサーの開発(Ce、Y)
1980年代
1982:日本希土類学会創立
三波長蛍光ランプの普及(Y、Eu、Tb)始まる
ミノルタ、オートフォーカスα7000発売
住友特殊金属、NdFeB磁石を発表
世界的な超伝導フィーバー(Y)
1990年代
ニッケル水素電池が実用化
ソニー、ミニディスク発売(Tb、Dy)
自動車用の紫外線吸収ガラスにセリウムが使用される
1993:希土類磁石がフェライト磁石の販売額を抜く(1,767トン、488億円)
携帯電話が普及し始める
Windows95発売。
HDD向けネオジ磁石の需要拡大
トヨタ初代プリウス発売
2000年代
ランタン添加の高性能フェライト磁石普及
京都議定書批准による省エネ、環境問題から、モーター、電池の需要増大
【課題】燃料電池の開発、磁気冷凍の開発、コージェネデバイスの普及、希土類原料のリサイクル促進
2005年代
2代目プリウスでハイブリッドカーが普及(ネオジ磁石、ニッケル水素電池の需要拡大)
フラットパネルディスプレイの普及(PDP、液晶)
1940年代
1943:探照灯用フッ化希土生産のため日本金属化学(現・太陽鉱工)が設立される
1947:清美化学(現・セイミケミカル)設立
1949:日本金属化学、新日本金属化学に社名変更
1949:三徳金属工業(現・三徳)設立
1950年代
1957:日産稀元素化学設立。希土類化合物の生産開始
1957:和光物産、IREの総代理店となる
1960年代
1963:三井金属、三井物産と合弁で、三金レアアースを設立
1966:信越化学、高純度イットリアの企業化発表
1968:三井金属、東北金属工業との合弁で日本イットリウムを設立
1969:三金レアアース、三井金属の完全子会社となる
1970年代
1970:新日本金属化学、三光稀元素静岡工場を買収
1971:三徳金属、希土類金属の酸化物電解法を工業化
1974:三菱商事、Molycorpの総代理店になる
1975:三菱化成、Malaysian Rare Earth Corp(MAREC)を設立
1979:三菱化成、ノルウェーMEGONと合弁で、MCI-MEGONを設立
1980年代
1980:三菱化成、マレーシアにAsian Rare Earth(ARE)を設立
1980:三井金属、三金レアーアースを解散
1984:昭和電工、希土類合金の製造を開始
1985:住友軽金属工業、希土類母合金の生産開始
1985:三井金属鉱業、三池メタル工場で中国イオン鉱の処理開始
1986:ローヌプーラン、住友金属鉱山と合弁で、日本レアアースを設立
1986:三菱金属、アメリカReactive Metalと合弁で、NEOMETを設立
1990年代
1990:住友金属工業、Molycorpと合弁で、住金モリコープを設立
1994:日本レアアース解散
1997:同和レアアース解散
1997:三菱化学、黒崎工場の希土類生産を中止
1998:三菱マテリアル、アメリカ子会社Neometを清算
1999:三徳、アメリカ子会社Santoku Americaを設立
2000年代
2001:住友軽金属工業、希土類母合金の製造中止
2001:三徳、中国包頭に子会社の包頭三徳電池材料有限公司を設立
2002:昭和電工、中国包頭にネオジム合金を製造する合弁会社を設立

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